米の糖分をアルコールと二酸化炭素に分解する『酵母』は、日本酒造りに欠かせないものです。
日本醸造協会が頒布する『きょうかい酵母』のほか、自治体が開発した酵母、蔵に昔から住み着いている酵母などを使って日本酒が造られています。
そして、近年になって『第4の酵母』ともいうべき酵母が登場しました。
その名は、『花酵母』
今回はそんな『花酵母』の魅力や特徴・味わいについて紹介します。
花酵母とは?
『花酵母』は、きょうかい酵母や自治体が開発した酵母に比べると、まだまだ新しい酵母です。
花酵母は、名前の通り、自然界に咲く花々から分離されました。
花酵母の開発のリーダーを務めたのは、東京農大花酵母研究会の中田 久保(なかた ひさやす)教授です。
酵母は、簡単に言うと「糖をエサにして増える菌」のことを言います。
自然界では、果物の棟などをエサにしていることが多く、ワイン酵母などはそんな自然界にいる酵母の一種です。
中田教授は「糖があるところに集まりやすい」という酵母の性質から、花の蜜に酵母があつまるのではないかと考えました。
しかし、花から直接酵母を取り出すのは容易ではなく、花の蜜に集まる酵母が「花酵母」として形になったのは平成13年のことでした。
その後、平成15年に東京農大花酵母研究会が発足し、現在では発見された約40種類の花酵母のうち、16種類が実際に酒造りに利用されています。
花酵母を使った日本酒の特徴
花酵母を使った日本酒は、全体的に香り高く優しく、上品な味わいに仕上がるとされています。
しかし、花酵母を使った日本酒の味わいは、酵母の分離元の花によって変わるところが大きく、一概に『こういう味わいである』と言えません。
実用化されている16種類の花酵母のうちいくつかの特徴をご紹介します。
ナデシコ
洋ナシのような香りとふくよかさが感じられる味わいの日本酒になります。
ベゴニア
フルーティーでしっかりとした味わいの日本酒になります。
ツルバラ
力強い味わいの日本酒に仕上がります。リンゴや洋ナシのような香りも感じられます。
アベリア
甘くフルーティーな香りの日本酒になります。味のバランスが良く、後味のキレが良いです
シャクナゲ
バナナのような甘い香りがします。しっかりとした味わいです。
日日草
スムースな飲み口のお酒になります。しっかりとした味わいも感じられるので、飲み飽きしません。
カーネーション
香りが穏やかで、さっぱりとした味わいの日本酒になります。
コスモス
キレがよく、個性的な味わいのお酒になります。
ヒマワリ
爽やかでさっぱりした味わいの日本酒ができます。
ツツジ
米の甘みを引き立ててくれる酵母です。後味のキレも良く仕上がります。
イチゴ
フレッシュな爽快感が感じられる日本酒を造る酵母です。
月下美人
キリッとした印象で、のど越しの良い日本酒ができます。
カトレア
エレガントな香りとしっかりとした味わいが特徴です。
マリーゴールド
キレがよく、しっかりとした味わいの日本酒ができます。マリーゴールド酵母で作ったお酒は、燗酒にもおすすめです。
花酵母を使った日本酒はどこで作られているの?
花酵母は、『東京農大花酵母研究会』に所属している蔵元しか使えない酵母です。
花酵母を使った日本酒を飲んでみたい場合は、まずは東京農大花酵母研究会のサイトで、所属蔵元を検索してみましょう。
有名なところでは佐賀の『天吹酒造』や茨城の『来福酒造』、岐阜の『原田酒造場』があります。
蔵によって使っている花酵母の種類が異なるので、そちらも併せてチェックしてみてください
まとめ
花酵母を使った日本酒は、まだまだ多いとは言えませんが徐々に増えてきつつあります。
きょうかい酵母や自治体開発酵母を使った日本酒とは違った味わいが楽しめるので、見かけた際はぜひ手に取ってみてください!
華やかな味わいに魅了されること、楽しみにしています!