日本酒好きなら、一度は『杜氏(とうじ)』という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「酒造りに関わる職業ということは知っているけど、杜氏って具体的にどんなことをしているの??」
今回は、まさしくそのような声にお答えする記事に。
杜氏の役割や歴史を解説します。
杜氏ってどんな仕事をするの?
「日本酒の味と質は杜氏が決める」などと言われることもある杜氏ですが、酒造りに関わる人だということは知っていても、具体的にどんなことをしているのか知る機会はあまりありません。
では、杜氏とは具体的に酒造りに置いてどんな役割を果たす人のことをいうのでしょうか?
杜氏は、簡単に言うと『酒造りの最高責任者』です。
その蔵元の酒の味や質を決める人と言っても過言ではありません。
米の削り具合や浸水具合、蒸す時間、発酵させる期間など、日本酒の質を左右する事柄は杜氏の勘によって決められることも多いです。
最近はコンピューターなどを導入している蔵元もありますが、酒造りを知り尽くした杜氏の経験と勘を超えることは容易ではありません。
杜氏になるには、蔵人として長年酒造りに携わって経験を積むことが大切です。蔵人としてのキャリアが認められれば、杜氏に抜擢される可能性があります。
あるいは、醸造科など日本酒の醸造が学べる農業系の大学・短大を出て、酒造メーカーに就職し杜氏になる人もいます。
“家を継ぐ”という形で杜氏になる人もいます。
現在は若くして杜氏になる人や女性の杜氏、醸造科以外の大学を出て杜氏になる人も増えてきました。
杜氏の歴史
杜氏という職業が生まれたのは、江戸時代のことです。
江戸時代になると、冬の寒い時期に一気に日本酒を作るようになりました。
しかし、短期間で大量に日本酒を作るにあたって問題となったのが人手不足です。
蔵元の家族や従業員だけではとても手が足りないため、農閑期の農民に酒造りを手伝ってもらったのが始まりです。
農閑期の農民は、グループを作って全国各地の蔵元に出向き、住み込みで酒造りに従事しました。このグループのまとめ役を『杜氏』」といったのです。
日本酒用語の「〇〇杜氏」の〇〇は、その杜氏の出身地を表しています。
岩手県南部地方出身の杜氏は『南部杜氏』、石川県能登地方出身の杜氏は『能登杜氏』、また吟醸造りを発明したのは『広島杜氏』とも言われ、さまざまな杜氏がそれぞれに異なる方法で酒造りを行いました。
後に杜氏の出身地による造り方の違いは『流派』と呼ばれるようになり、今も全国各地にたくさんの流派があります。
日本酒の味に違いを出す杜氏の技とは?
酒造りが科学的に解明されるようになり、安定した品質の日本酒が作りやすくなってはきましたが、それでも日本酒が美味しくできるかどうかは杜氏の腕にかかっています。
では、杜氏はどんな技で日本酒の味に違いを出すのでしょうか?
杜氏の技は、日本酒造りの随所にみられます。
酒米の硬さや溶けやすさなどをチェックし、ベストな精米歩合・浸水時間を見極めることも長年の経験がなせる業です。
日本酒は、精米歩合が1%、浸水時間が1秒違うだけでも味が変わってくるため、経験と勘による繊細な調整が欠かせません。
その後、いつまで発酵させるか、どれくらいの温度で管理するかなど、日本酒を作るうえで細かいことを判断していきます。
日本酒はとても繊細なお酒なので、わずかな違いで味に大きな差が生まれます。
同じ酒米・同じ酵母を使い、同じ条件で仕込んだ日本酒でも、蔵元ごとに味がことなるのは杜氏の違いによるところが大きいです。
さいごに
日本酒造りの最高責任者である杜氏は、日本酒の管理だけでなく、酒造りに関わるスタッフを取りまとめ、時にはメンバー間の調整なども行う『スーパー管理職』といっても過言ではない職業です。
杜氏の職人技なくして、美味しい日本酒は生まれません。
日本酒を飲むときには、ぜひその日本酒を手掛けた杜氏にも思いを馳せてみてはいかがでしょう?