オフィスと居酒屋が融合する街、東京都神田。
ここに日本酒ファンがこぞって訪れる(筆者も通う)楽園があります。
『サケラバ』
まさしくお酒を冠した同店は、日本酒時間無制限100種類飲み放題を提供しています。
飲み放題と侮るなかれ。
名だたる有名地酒から、知名度こそないものの確かな味わいの日本酒ばかり揃えています。
サケラバを運営する店主の古澤さんに、日本酒への想い、また同店への想いを伺いました。
始まりは『お酒嫌い』
― 本日はよろしくお願いします。まさしく日本酒ファンにとっての天国のようなお店ですが、古澤さんはもともと日本酒が好きだったんですか?
古澤さん
あ、ざっくりいうと嫌いでした(笑)
もともとお酒自体が嫌いでした…何が美味しんだろう、と。ビールは苦いし、日本酒は罰ゲームで飲むようなイメージでしたし。
― えっ、最初から意外すぎるお話(笑) なんでそこからここまでに。
古澤さん
まず、お酒全般を好きになったきっかけが赤ワインだったんですよね。
すごくフルーティーなのを味わってから3,4年ハマって…そんなときに当時の飲み仲間が誘ってきたんですよね。
「ワインもいいけど、日本酒も美味しいぞ」って。でも当時は、悪酔いするイメージしかなくて(笑)
― わかります!僕もそういうイメージでした(笑)
古澤さん
それで「騙されたと思って飲んでみて!」と出されたのが『雪の茅舎(ゆきのぼうしゃ)』。
で、飲んでみれば「あれ、日本酒ってこんな美味しいんだ」って感じたんですよね。
「二日酔いも水を飲めば大丈夫だから」ということで、水飲みながらガブガブ飲んでしまって「明日二日酔いだな」って思って翌日迎えたら、むしろ調子が良かったんですよ(笑)
それが日本酒に興味を持ったきっかけでしたかね。
そして、その後で池袋の『裏や』さんに連れて行ってもらって。
― あー!ジュンク堂の通りの!
古澤さん
そうそう!そこです!
そのときに出会ったのが『屋守(おくのかみ)』で、「東京でもこんなに美味しいお酒造ってるんだな」って感じて、後はもうドハマりでしたね。
あとは私の出身地の栃木のお酒…『姿』『鳳凰美田』を飲んで、今までの日本酒のイメージがまるっきしなくなって…嫌いから好きになって(笑)
運命の出会い、やまちゃん
― 惹き込まれたんですね!そしてそこから、サケラバへ…??
古澤さん
そういうことがあってから、日本酒を色んな人と一緒に飲むようになったんですよ。
そのときに出会った一人が、やまちゃん注1。
当時、このスタイル(日本酒時間無制限飲み放題)ってなくて、飲むならバーで一杯700円とか取られたんですよ。でも自分は90mlで多くの銘柄を飲みたくて…。
やまちゃんは出会ったときは四谷三丁目に構えて、60種類の飲み放題。それで、3,240円。
「ありえないな」と。
「安酒しかないのかな」って思いながら行ったら、入っているお酒のレパートリーがすごいんですよ。当時好きだった鳳凰美田のトップクラスとかが普通に置いているんですよね。
この人大丈夫かなって思いました(笑)
それから何度も飲みに行くようになったんですよね。貸し切りとかでも。
でも気づいたら予約取れないお店になっちゃったんですよね。
そしたら新宿三丁目に移転したんですよね。
― あー、僕が行き始めたのは新宿三丁目時代からですね。
古澤さん
そこでもギューギューだったんですよ。
最初のやまちゃんのお店は『ゆっくりいろんなお酒を味わえる』イメージだったので、正直「その雰囲気は飲みにくくなるなー」と感じてたんですよね。
でも、何度もそれを経験していくうちに、周りの人たちと交流し合うというのが楽しくなってきちゃって。
そしたらいつの間にか“いつの日か、こういう仕事してみたいな”って。
サケラバ開店へ
― 日本酒愛と交流への想いがふつふつとという感じだったんですね
古澤さん
儲からないだろうなぁとは考えつつも、それを度外視しても楽しいのには変えられないな、って。
で、そこからやまちゃんに連続で通って「バイトをさせてほしい」ってお願いしたんですよね。
そしたら「いいですよー」って。
― すごい行動力
古澤さん
やまちゃんの軽いノリで言っていたんですけど、あからさまに逃げられてる感じがあったんですよね(笑)
それでもめげずにお願いし続けているうちに「こういうお店やりたいの?」っていってくれて…「やりたいです」って答えたら、「バイトは難しいけど、修行という形でノウハウとか繋がりを全て授ける形でもいい?」って。
そこで「もちろんです」というところから始まりでしたね。
― まるで落語家の師弟関係みたいな
古澤さん
そこで、すごいなって思うのは本当に惜しげもなく全て教えてくれるんですよね。
普通『十四代』って手に入らないのに、お店のオープン時からありましたもん。
あと、普通だったらロイヤリティとかもあるはずなのに、そういうのも一切ないんですよね。
― すごいお人柄…
古澤さん
しかもノウハウだけでなくお客さんもですよね。
修行を続けて、お店も決まったら「はい宣伝!」って全部やってくれるんですよね。『やまちゃん公認』までくれて、店内からホームページから本当に全部。
―(絶句)
古澤さん
「この人はすごい」って思って。
― 確かに、私もサケラバさんを知ったのはやまちゃんに行っていて宣伝されてたからでした。
古澤さん
なかなかできるものじゃないですよね。
サケラバ運営への想い、ビギナーにこそ伝わる日本酒の魅力も
― サケラバ運営にあたって大事にしていることはありますか。
古澤さん
そうですね、コンセプトは『日本酒の裾野を広げたい』。これが大前提になるので、コアなファンだけでなく、いろいろな人に「有名銘柄以外でも魅力的なお酒があるよ!」ってことを伝えたいですね。
どうしても日本酒好きになった人たちは最初は有名銘柄が多いんですけど…。
― その想いはこのようなスタイルだといいですよね。十四代や新政がありつつも似た系統のお酒とか紹介できますもんね。
古澤さん
でも、フルーティーなのがずっと好きだった人ってそれしか飲んでいないこと多いので、辛口勧めるとめちゃくちゃハマったりするんですよね。
逆も然りで辛口好きにフルーティーなお酒を勧めると、ハマることもあって、そういう反応とか面白いですよね。
― 日本酒は様々なタイプがあるというお話もありましたが、日本酒の魅力ってなんでしょうか
古澤さん
すごく手間隙かけたお酒じゃないですか。
あれ程にまで手間隙かかっているお酒って他にはないと思うんです…だからこそ蔵人さんたちの想いが凝縮されていますし。
あとは、お酒として…飲み物として何にでも合わせることができますよね。
ご飯を食べながら、「日本酒美味しい」と感じられる。多分日本酒が一番なんじゃないですかね。
しかも洋食にも合うっていう。
― 元が米ですしね(笑) イタリアン、フレンチなんでもいけますよね。
古澤さん
しかも最近ワイン酵母仕込の日本酒もありますからね(笑)
完全に洋食に合わせられますよ(笑)
さいごに ー楽しい雰囲気で美酒を楽しむー
― やはり家でもお酒はかなり飲んで研究されているんですか?
古澤さん
実は全く飲まないんですよ。というのも家にほとんどいないので、一度開けちゃうとだめになっちゃうんですよね。
あとは、やはり誰かと一緒に好きな話をしつつ楽しんでるのが好きだからですかね。バーとか行っても楽しめないですもん(笑)
― 謎の圧力とかありますよね!であれば、こういうシステムは自分で料理持ち込めたり作ったりできていいですよね。
古澤さん
そうですね、この空間も一つのツールですよね。その人達が楽しんでくれるような状況があれば、お酒は美味しいですし。
― そういう場で日本酒を口にして感動するビギナーもいますよね。その感動を届けることができるのも日本酒の魅力ですよね。
古澤さん
そうですね。
なので、ぜひサケラバでも、日本酒を全く飲んだことがない人だったりちょっとだけ興味はあるけど飲んだことがない人だったり、そういう方々に来てもらいたいと思いますし、絶対に楽しめると思いますね。
― 日本酒の魅力を広げたい気持ち、すごく共感しました。私も少しでも裾野を広げる一翼を担えたらと思います。本日はありがとうございました。
取材協力 | サケラバ 日本酒セルフ飲み放題 |
住所 | 東京都千代田区鍛冶町2-7-3 国際ビル3F JR神田駅/東京メトロ銀座線 徒歩1分 |
電話番号 | 03-6262-9994 |
注1:日本酒時間無制限飲み放題スタイルの提供人気を博し、様々な地域で弟子が同スタイルのお店を出店するまでに慕われている