香りから味わい、余韻まで…さまざまな部分で魅力を存分に発揮する日本酒。
でも、意外と日本酒の種類が多いと戸惑う人が多いのも事実。
今回は、日本酒のラベルに記載されているスペックのうち「火入れ」「生酒」について、特徴や味わいの感想をお届けします!
火入れ?味わいの特徴
「火入れ」とは、醪を絞った後の日本酒に行う加熱殺菌処理のこと。
日本酒はお米、米こうじ、水を主な原料とし、それらを酵母などが発酵させて日本酒に近付いていきます。
発酵が進むにつれて美味しさのピークに近づいていきますが、ピークを迎えたタイミングで醪を絞ってそのまま貯蔵しても、酵母や酵素が生きているため貯蔵庫内でも発酵が進みます。
発酵が止まらずに味のピークを過ぎてしまうのも問題ですが、そのまま発酵が進み続けると酒質が変わって味が落ちる程度では済まず、最終的には腐ってしまいます。
また、「火落ち菌」という乳酸菌が混入してしまった場合、お酒が白く濁る、お酒が酢のようになってしまう、老ね香を放つようになるなど様々な悪影響を及ぼします。
それらを防止し酒質をいい状態に留めておくために、乳酸菌を殺菌し、発酵の原因となる酵母や酵素の活動を止める加熱殺菌処理、「火入れ」を行います。
日本酒の中はこの火入れを2回、「醪から絞り終えて貯蔵に入る前」と「貯蔵を終えて瓶詰めする直前」に行うものが多数あります。
貯蔵に入る前の1回目の火入れは、貯蔵中にどのように熟成していくかを決定づける重要なものです。
2回目の瓶詰め直前の火入れは貯蔵後の状態を保つためのもの。吟醸酒などの香りを売りとしているお酒は、香りが飛ぶのを避けるために瓶詰めした後に2回目の火入れを行う場合もあるそうです。
火入れを行うとお酒の持つ酸味が落ち着き、貯蔵・熟成を経ることで旨味やまろやかさ、深みのある味わいへと変化していきます。
今回のタイトルに含まれている「生◯◯」というのは「特定のタイミングでこの火入れを行わずに出荷された日本酒」を示すものです。
それぞれがどう違うのか、これからご紹介します。
生貯蔵とは?味わいの特徴
生貯蔵は前述した「1回目」の火入れを行わない、名の通り「生」のまま「貯蔵」されたお酒を指します。
「先生」(さきなま)、「生貯」(なまちょ)ということも。
出荷前の火入れで出荷後に酒質が変化しにくいためか、生と名のつくお酒の中では最も流通量が多いそうです。
火入れの回数が少ない分通常の日本酒よりも香り高く、みずみずしい味わいに仕上がり、この後触れる「生酒」と比較すると、落ち着いてあっさりとした印象を受けます。
火入れをせずに貯蔵しているため、生酒特有の風味が残りやすいです。
生詰とは?味わいの特徴
生詰は「2回目」の火入れを行わず、「生」のまま瓶「詰」めして出荷するお酒です。
生貯蔵が先生(さきなま)と呼ばれることがあるように、こちらも「後生」(あとなま)といわれることがあります。
秋のお酒として楽しまれている「ひやおろし」も火入れを一度行っていない生のお酒で、こちらの生詰にカテゴライズされます。
1回目の火入れを行った後、貯蔵庫内で熟成が進んでいるため、生貯蔵と比べると生酒特有の風味は弱いですが、まろやかな甘みや味わい深さが強くなりやすいです
生酒(本生)とは?味わいの特徴
これまでに触れた「生貯蔵」「生詰」は「生」と名付けられ、蔵元によっては生の部分を強調して販売されていますが、どちらも一度は火入れを行っているので完全な生酒とは言えません。
生の生、一度も火入れを行わずに届けられるお酒がこの生酒です。「生生」(なまなま)、「本生」(ほんなま)と呼ばれることも。
酒質を落ち着かせるための火入れを一度も行わないため、生産するには高度な技術が必要な上、保存どころか輸送時にも冷暗所での管理が求められるので流通量は少なく、取り扱うお店もそう多くありません。
購入後も同様に冷暗所での保存が必須、開封後の長期保存は出来ないと、非常にデリケートなお酒です。
口にするまでのハードルは高いですが、搾りたての日本酒がもつフレッシュ感や強めの酸味、華やかな香りをはっきりと感じられる味わいを楽しめるのが魅力です。
さいごに
「火入れ」と「生酒」には確かに製法に大きな違いがあり、その味わいも製法独自の感じ方があります。
しかし、日本酒は製法だけでなく「お米」や「お水」等の原料や保存状況など様々な余運により味わいが決まっていきます。
今回の「火入れ」「生酒」もその味わいを決める一部でしかありません。
ラベルに書かれたスペックを参考に、好みの日本酒をぜひ見つけてみてください!